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【健康経営 事例紹介】成功企業から学ぶ健康経営の取り組みと具体策

健康経営
健康経営は、従業員と経営の双方にメリットがあります。
経営側の視点では、従来の経営方針に「従業員の健康」が加わるだけで会社のしくみからつくり変えていく必要が生じます。
新しい取り組みについてどこから着手すべきかわからないとき、参考になるのが他社の事例です。健康経営の導入に成功している企業の事例から自社にフィードバックできるヒントを探りましょう。

日本は後進国?健康経営は世界的なトレンド

健康経営は、経済学と心理学の研究者であるロバート・ローゼンによる「The Healthy Company」(1992年出版)という著作の中で提唱された概念がもとになっています。従業員の健康維持に対して投資することで、生産性や業績を向上させるという考え方です。

健康経営の先進国であるアメリカでは、Googleなどに代表される先進的な健康経営の事例が数多く見られます。残念ながら、健康経営を実践している日本企業は5割程度と言われています。

アメリカの企業が健康経営に積極的に取り組む理由のひとつには、保険制度の問題があります。国民皆保険制度がないアメリカでは任意医療保険が利用されています。アメリカの医療ドラマを見ていると、加入している医療保険によって治療が制限されたり、入院を断られたりする場面が頻繁にあります。国民皆保険制度の日本ではあまり見られない光景ですが、医療保険の違いがダイレクトに医療格差につながっています。そのため、充実した医療保険、年金保険を提供することが採用市場における大きなアドバンテージになります。

 しかし、アメリカでも増え続ける国民の医療費は社会問題になっており、医療費に連動して増大する保険料負担が企業の収益を圧迫しています。つまり、企業がめざすべきは優秀な人材を獲得するために充実した医療保険を用意し、できるだけその保険を利用させないこと。そこで考えられたのが健康経営です。従業員の立場でも、いくら充実した治療が受けられるとしても最初から病気にかからない方がベターですし、健康維持のために働きやすい環境が整えられる訳ですからメリットしかありません。

 

労使双方にメリットがあり、生産性や持続可能性を向上させる取り組みとして、健康経営やさらにふみこんだウェルビーイング経営※が世界的なトレンドになりつつあります。 

※<ウェルビーイング経営とは>
心身ともに健康で社会的に満たされた幸福な状態である「ウェルビーイング」を、その企業の社員だけでなく、消費者、株主、仕入れ先など関わりのあるすべてのステークホルダーがウェルビーイングな状態になることを目指した経営です。

 

出典:健康経営とは?その促進方法と評価指標、システム化に向けた調査(青山学院大学 Well-Being)
http://www.cc.aoyama.ac.jp/~well-being/helthy-company/index.html

 

健康経営の導入に成功した企業事例

健康経営に取り組んでいる企業の事例を紹介します。健康経営銘柄や健康経営優良法人に選ばれている企業グループだけでなく、ベンチャーや中小企業でも健康経営の取り組む会社はあります。企業規模を問わず、経営陣が先頭に立って従業員をまきこみ、課題に向き合っている点が共通しています。

(1)パソナグループ

https://www.pasonagroup.co.jp/company/health.html

 人材ビジネス大手のパソナグループは、健康宣言の中で健康に働ける環境づくり、健康的な文化や食の創造を掲げています。ライフスタイル調査で健康リテラシーを高め、生活習慣の見直しに役立てるよう個人の結果とグループ全体での位置づけがフィードバックされます。また、健康づくりを通して組織の垣根を超えたコミュニケーションを促進するべく、交流イベントなども開催しています。

 ・全社員を対象に生活習慣をスコア化するライフスタイル調査を実施
 ・オンラインエクササイズ、専門職による健康LIVEセミナー等のオンラインプログラム
 ・オリジナルの「パソナ体操」を開発、朝礼や会議の前に全員で体を動かす
 ・スーツ姿で運動できるトレーニングジムの設置
    ・健康に配慮したランチメニューの提供     ほか

(2)花王株式会社

https://www.kao.co.jp/genki/kenkoukeiei/introduction/

 ヒューマンヘルスケア事業を通して得た知見を、社員と家族の健康づくりの「Kao GENKI ACTION」に活かしています。Kao GENKI ACTIONは健康状態や生活習慣を可視化することで、健康意識を高め、生活習慣の改善につなげるプログラムです。ホコタッチを活用して歩行の促進と同時に、工場や営業支店間の対抗企画を開催し、社員間のコミュニケーション活性化をめざします。こうした取り組みを無理なく、楽しみながら継続できるよう自社製品を活用して応援します。

・内臓脂肪と生活習慣を測定
・分析する「生活習慣測定会」

・内臓脂肪を溜めにくいメニューを社食で提供する「スマート和食」
・歩行生活年齢を計測活する活動量計を配布し、歩く環境づくり「ホコタッチ」 ほか

(3)サントリーグループ

https://www.suntory.co.jp/company/csr/activity/diversity/health/

 サントリーというとお酒のメーカーというイメージでしたが、近年はサプリメントやスキンケアなどのウエルネス分野にも力を入れています。健康経営においては、働き方改革と連動した職場環境づくりと健康不安を感じていない層へのヘルスリテラシー教育、からだの健康のための生活習慣改善、メンタルヘルス不調の予防と早期発見を施策としています。それらへの取り組みを「サントリー健康白書」にまとめて社内外に発信しています。

 ・健康相談の窓口として事業所ごとに社内看護職を配置。産業医、メンタル専門医、臨床心理士などと連携して対応。
・喫煙率低下の「卒煙プロジェクト」、適正飲酒啓発の「DRINK SMART」、健康行動でポイントが貯まる「ヘルスマイレージ」など、生活習慣病予防の取り組み
・自分でストレスに対応する「セルフケア」、マネジャーによる「ラインケア」に加え、専門職によるカウンセリングなどを実施 ほか

(4)株式会社じげん

https://zigexn.co.jp/

 株式会社じげんは、インターネットメディアの情報を統合して活用できるEXサイト、業種や地域に特化したメディアやリアルサービスなどのライフサービスプラットフォーム事業を展開しています。社員個々の労働負荷を早めに察知して未然にケアすること、社員の多様性をふまえて産業保健、健康経営のあり方を考えるため、社員のニーズをボトムアップで集めて対応しています。また、健康経営について産業医が経営陣へのアドバイザリーを行っています。仕組みや工夫で対応することで、マンパワーやコストを抑えています。

・産業医による「全員面談」、オフィス内を巡回して観察する「ぶらぶら巡視」の実施
・業務時間内の20分間の仮眠をとれる「Napping Minutes(エヌミニッツ)」
・運動しながらデスクワークや打ち合わせができる「FitDesk」導入      ほか

 参考:中小企業の健康経営を考える ー 株式会社じげん 前編、後編(サンポナビ)https://zigexn.co.jp/3766/
https://zigexn.co.jp/1990/

(5)株式会社協和

https://www.kyowa-group.co.jp/culture

株式会社協和は健康・美容関連製品の販売などを行う従業員数50名ほどの会社です。お客様に美と健康を届ける会社としての想いから、積極的に健康経営に取り組まれています。仕事を始める前に経営者を含む全従業員でトレーニングを行っています。

・元オリンピアン(競歩)の柳澤哲氏監修のオリジナルのスロートレーニング
 ・たるみやシワ、くすみを改善するフェイストレーニング

 

楽しみながら取り組める!健康増進のためのユニークな制度

会社のオリジナリティを反映したユニークな健康増進の制度を紹介します。従業員数が少ないからこそ、トライアルや導入がしやすいというメリットもあります。

 (1)株式会社はてな「自転車通勤支援制度」

カルチャー - 株式会社はてな
はてなブログ、はてなブックマークなどを運営する株式会社はてなの会社情報

はてなブログ運営などインターネットサービス事業の株式会社はてなでは、従業員の健康維持のため、自転車で通勤する社員に月2万円の手当を支給するほか、通勤中の事故をカバーする保険料も会社が負担します。駐輪場はもちろん、汗を流すためのバスルームまで完備されています。
同社においては、障害発生などの緊急時に時間を問わず出勤できるといった事業上のメリットもあります。

<自転車通勤のメリット>
・従業員の健康維持、増進
・交通機関の遅延や交通渋滞の影響を受けない
・通勤時のストレスがなくなる
・エコ
・フレンドリー企業としてイメージアップ

 (2)株式会社ヒューゴ「シエスタ制度」

https://www.hugoinc.us/

デジタルマーケティング、IoTなどWeb関連事業を展開する株式会社ヒューゴでは、生産性向上をめざしてシエスタ制度を導入しています。シエスタ(西:siesta)とは、昼過ぎから夕刻前の時間帯にゆっくり昼食をとった後に昼寝をするスペインの習慣をさします。

それに習った3時間のシエスタでは仮眠をとることが奨励されていますが、社員は個人の裁量でジムに行ったり、早く帰りたい日はシエスタをとらずに仕事をしたりと有効活用しているそうです。対外的には13~16時は休業となりますが、業務に支障が出ることはなく、残業もほとんどないそうです。

 出典:株式会社ヒューゴ メディア掲載 日経新聞(2019年05月27日)https://www.hugoinc.us/site/2019/05/%e3%82%b7%e3%82%a8%e3%82%b9%e3%82%bf%e5%88%b6%e5%ba%a6%ef%bc%88%e7%a4%be%e5%86%85%e3%81%ae%e6%98%bc%e5%af%9d%ef%bc%89%e3%81%a8%e3%83%aa%e3%83%a2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af%e3%81%ab/

(3)株式会社 Eyes, JAPAN「フリービタミン制度」

https://www.nowhere.co.jp/culture/welfare/

 最先端技術の研究開発とデジタルカルチャーの創造をめざす株式会社 Eyes, JAPANには、企業カルチャーを表現するユニークな福利厚生が用意されています。その中のひとつがフリービタミン制度。朝食をとらないで出勤する社員のためにフルーツが常備されています。仕事の前に美味しいフルーツを食べて血糖値を上げれば、生産性向上が期待できます。

 

成功した企業事例に学び、自社の個性を出そう!

健康経営は、欧米を中心に広く普及しはじめています。健康経営を推進する企業は情報開示にも積極的です。公開された事例を通して、健康経営の具体的なアプローチを知ることができます。

 しかし、他社で効果があったアプローチが自社でも効果的とは限りません。健康経営は、自社の健康課題に的確にリーチすることが重要なのです。健康課題が共通していたとしても事業内容や規模、従業員の年齢構成などのギャップにより、とるべき対策は変わってきます。

健康課題は事業所や職種によっても異なります。健康経営では健康課題に対応すると同時に、会社の文化や個性を積極的に打ち出すべきだと思います。他社の事例を参考にするのは有益ですが、必ず自社のオリジナルのエッセンスを加えることをお奨めしたいです。

 BRSTは法人会員向けのデフォルトのサービスとして、会社ごとの健康課題に対応するワークショップやセッションを企画・提供しています。こうしたサービスの活用で、よりエフェクティブなアプローチをつくれるでしょう。

 

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BRST COLUMN編集チーム Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、ビジネス系を中心にアニメ・マンガ、車から美容・健康まで対応!コロナ禍での運動不足から、ウェルネス習慣、おうちフィットネスへの関心が爆上がり中。