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企業のメンタルヘルスケアへの取り組みとは?事例とすぐ始められる施策を解説

メンタルヘルス

  厚労省にメンタルヘルス総合サイトでも、100人中約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果をとりあげているように、心の病を原因とする休職や退職は増加を続けています。
人材確保に悩む企業にとっては無視できない状況であり、メンタルヘルスケアへの取り組みはBCPの一環と言っても過言ではないでしょう。メンタルヘルスケアの取り組み事例とあわせて、概要から対策のポイントを解説します。 

 

この記事を読んで欲しい人
・ストレスチェックで高ストレス者が多かった企業の経営者、HR担当者
・うつ経験者が職場復帰できる環境を整えたい経営者、HR担当者
・メンタルヘルスケアを充実させて働きやすい会社をめざすベンチャー、スタートアップの経営者

ストレスチェック活用でメンタルヘルスケアに効果

 日本生産性本部は、10年にわたって上場企業の人事担当を対象に、メンタルヘルスの取り組みに関するアンケート調査を実施しています。2019年12月発表の第10回調査(回答数144社)では、従業員の「心の病」は2019年までの増加傾向から横ばいに転じたものの、コロナ禍で従業員のメンタルヘルスは悪化しているという回答が40%を超えています。

 「従業員の心の病が減少傾向」と回答した企業は、「健康経営」「ハラスメント対策」「働き方改革(場所に縛られない働き方)」に効果があったという割合が多かったそうです。適切な取り組みによって、従業員のメンタルヘルスを維持もしくは改善できることがわかります。

  本調査の回答者は、基本的にストレスチェック義務化(50人以上は義務、50人未満は努力義務)の対象となる企業規模ですが、法制義務として対応するだけでなく「生産性向上」「職場の活性化」といったポジティブな目的に活用する企業も増えています。ストレスチェックは個別のメンタルヘルスケアの指標とするほか、高ストレスと判定された人の共通点や組織内の分布といった分析にも活用できます。

 

参考:第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果(公益財団法人 日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/research/detail/005595.html

 参考:改正労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度について(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150422-1.pdf

 

メンタルヘルスケアの3ステップ

 医学は病気を治す治療医学と予防医学に分類されます。予防医学は、病気の発生や重症化の予防することと治療後の社会復帰の支援をさします。ここではメンタルヘルスケアの3ステップを解説します。

一次予防 病気にかからないための処置・指導
例)生活習慣改善の指導、健康教育、予防接種など
二次予防 早期発見、早期治療に結びつけ重症化させないための処置・指導例)健康診断、セルフチェック
三次予防 社会復帰や再発防止のための取り組み
例)保健指導、リハビリテーション

 

(1)    一次予防:メンタルヘルス不調を起こさないための対策

メンタルヘルスケアでは積極的にメンタルの健康を良好な状態にすることと(ヘルス・プロモーション)、仕事が原因で起こる不調を防ぐ(ヘルス・プロテクション)ことが一次予防に該当します。

ヘルス・プロモーションは、一人一人がメンタルヘルスに関する正しい知識を持ち、自分のストレスを自覚し、対処する方法やストレスの原因となる人間関係を良好にする方法を理解するための取り組みです。具体的には、メンタルヘルスについての教育や情報提供、社内外の相談窓口の整備などがこれにあたります。ヘルス・プロテクションは、メンタルヘルス不調の要因を取り除く取り組みです

(2)二次予防:早期発見と適切な対応をとるための対策

このフェーズの目的は早期発見と早期治療です。具体的には、上司や人事部門などの社内関係者、産業医、保健師などの社外スタッフとの面談や定期健康診断などがこれにあたります。できるだけ早期に発見して、医療機関へのエスカレーション、早期治療に向けてのサポートを行います。そのためには、メンタルヘルスに関する正しい知識と適切に対処できる体制、必要に応じてそれを活用できる情報の周知、すなわち一次予防と同じアクションが必要です。

 (3)三次予防:回復後の職場復帰支援

三次予防は回復後の職場復帰支援と再発を防止する取り組みです。具体的には、休職中のフォローから職場復帰を支援するしくみと適切な運用です。スムーズな職場復帰と再発防止のためには、家族や主治医との連携体制、職場復帰を受け入れる管理職向け研修なども必要です。他の疾病と比較してもメンタルヘルス不調は再発しやすく、再発によって離職するケースが多いと言われています。

 どのフェーズにも共通しますが、本人の意志や状況との折り合いのつけ方が重要になります。本人は会社や周囲の評価を気にして無理をしたり、全快したと過信したりすることがあります。無理をさせず、柔軟な対応を心がけることが、メンタルヘルスケアの効果を引き出すポイントです。

企業がとるべきメンタルヘルスケア

(1)セルフケア

 セルフケアは、メンタルヘルスの原因となるストレスを自覚して対処したり、メンタルヘルス不調の兆候を発見したりすることです。メンタルのバランスが崩れていることに気づくのは難しく、そのためにはメンタルヘルス不調に関する正しい知識や対処方法を知っておく必要があります。また、会社が指示する研修や面談、定期健康診断を受けて、メンタルヘルス不調に向き合うことも大切です。

 (2)職場でのケア

 一次予防から三次予防の各プロセスで必要になるメンタルヘルス不調に対処するための知識や情報を周知することと適切な対処を行うためのしくみづくりと適切な運用が求められます。また、ストレスの原因を解消する職場環境や労働条件の見直しや点検も定期的に行う必要もあります。

 <職場でのメンタルヘルスケアの例>
・従業員個々と社内の役割(管理職、人事部門、面接相談員など)に応じた研修
・従業員へのメンタルヘルス、ストレスに関する情報提供
・ストレスチェックと高ストレス者への面談実施
・職場環境の改善
・生活習慣改善の指導
・適度な運動機会の提供    ほか

 (3)産業保健スタッフによるケア

 ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員には、産業医、保健師などの面談指導を行わなければなりません。産業医の配置義務がない会社は、地域や健康保険組合の相談窓口などを利用する方法もあります。

 (4)外部機関を活用するケア

 メンタルヘルス専門の医療機関や産業カウンセラーなどの医療サービスも増え始めています。メンタルヘルス不調での受診に抵抗を感じる人は多く、受診を先送りしてしまうケースも多いようです。産業医がいない場合は、会社が提携している医療機関を紹介できるとそうした問題を解消できます。

 

従業員100名以下の企業のメンタルヘルスケアの事例

(1)株式会社アイガ(ITサービス) https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp090/

アイガ(設立:1999年、従業員数:約160名、平均年齢:約27歳)は、ITエンジニアのアウトソーシング、WEBプロモーション、教育事業などのITビジネスを展開しています。アスリート向けの栄養指導などを行う部門を立ち上げた際に入社した専門職を中心とするチームが、健康経営の取り組みを推進しています。その一環として、ストレスチェックの結果を活用したメンタルヘルスケアに取り組んでいます。これらの取り組みを行った結果、メンタルヘルス不調による休職者が減少したそうです。

【メンタルヘルスケアの課題】
・経営層へのストレスチェック結果のフィードバックがない
・ストレスチェックの結果の分析や活用ができていない

<対策と取り組み>
    組織診断ツールの導入
・ストレス負荷の度合いだけでなく、ストレス要因などを個人および組織分析を行う
・部署ごとの傾向や課題を洗い出して具体的な対策できる
・ツール運営事業者が提供するビッグデータで、全国および同業他社と比較できる

    メンタルヘルスケアの体制づくり
・役職者への研修(保健師、カウンセラー)
・社内(安全衛生委員会メンバー)、社外(産業医)の相談窓口を設置

    セルフケアのリテラシー向上
・メンタルヘルスマネジメント検定合格者に資格手当(最大3年間、毎月8,000円)

 

(2)株式会社タック(シールド工事) https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp092/

タック(設立:1957年、グループ会社含む従業員数:約60名)は、シールド工事などの地下空間を整備する事業を行っています。従業員の意識改革をめざしてクレド活動や委員会活動を推進する傍ら、「社員には経験を積み成長し、幸せになってもらいたい」という社長の想いから健康経営を導入しました。バレーボールや卓球などのスポーツ大会を定期的に開催し、スポーツを通じて幅広い年齢層の社員のコミュニケーションを促進しています。

【メンタルヘルスケアの課題】
・社員の不安や不満を把握しておきたい

<対策と取り組み>
    ストレスチェックの実施と活用
・実施義務の対象ではないが、従業員のメンタルヘルス把握のために実施
・社内の相談窓口に幅広い年齢、性別の相談担当者を配置


積極的に声掛け
・高ストレス者の面接指導は地域の産業保健センターを利用

    食事や睡眠など健康面に関するアンケートを同時に実施
・食事や睡眠に関する意識が低いことがわかった
・食事に関するセミナー、睡眠に関する情報提供などの啓蒙活動

 

(3)阪急阪神リート投信株式会社(金融商品取引)https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp091/

阪急阪神リート投信(設立:2004年、従業員数:約35名)は、阪急阪神グループ会社で、主に投資運用などの金融商品取引業を行っています。少人数のため、病欠者が出たときの業務への影響が大きく、社員の健康への意識を高めるため、健康経営をめざしています。“食・運動・コミュニケーション”のキーワードに、社員の企画によるさまざまな取り組みを行っています。

<メンタルヘルスケアの取り組み>
    過重労働の防止
・フレックスタイム制度、テレワーク制度などの柔軟な働き方を導入
・残業時間の削減に成功、月の残業時間はほぼ40時間以内になった

    1日2回の “みんなdeラジオ体操”
・社内スペースを使って、任意参加で体操
・業務時間内に気軽に運動する機会をつくる

 

運動習慣をメンタルヘルスケアに活用

取り組み事例にあげたメンタルヘルスケアに取り組む企業でも、運動をとりいれています。メンタルの不調の予防・改善がメンタルヘルスケアの目的ですが、心と体はつながっていて、適度な運動によってストレスの軽減が期待でき、メンタルヘルスケアには効果的です。

メンタルの不調で体調を崩すケースだけでなく、体調不良から気分が落ちこむなど、メンタルに影響することも。特に女性はライフステージの変化が原因で抑うつが始まるケースが多く、うつを経験する女性は男性の1.6倍と言われています。具合が悪いというほどではなくても、何となくすっきりしない、不快を感じるときなど、適度な運動で体調が整うこともあります。

  従業員に運動機会を提供する福利厚生として、フィットネスの法人会員は定番です。しかし、サービス利用率の低さや継続利用が少ないという課題を抱える会社も多いです。そういった課題へのアプローチとして、仕事の合間でも続けやすく、運動初心者でも無理なく楽しめるオンラインのコンテンツは活用されてはいかがでしょうか。

 

リンク
オンラインウェルネスBRST
https://brst.work/

 

BRST COLUMN編集チーム Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、ビジネス系を中心にアニメ・マンガ、車から美容・健康まで対応!コロナ禍での運動不足から、ウェルネス習慣、おうちフィットネスへの関心が爆上がり中。