コロナ禍によるリモートワークの普及は、健康二次被害と呼ばれる社員の健康リスクや帰属意識の希薄化などの課題をもたらしています。
こうした課題解決に役立つ福利厚生サービスが注目されています。
リモートワークで働く社員の健康づくりや生産性向上につながる福利厚生サービスを紹介します。
リモートワーク導入で変わる福利厚生のニーズ
コロナ禍やリモートワークの普及で働き方が大きく変わっている現在、福利厚生にも変化が求められています。定番の社内イベントである会食や飲み会、社員旅行などは軒並み中止せざるを得なくなり、社員間のコミュニケーションの機会は非常に少なくなっています。
また、通勤手当に代わって在宅勤務手当を支給する企業も多いようです。自宅で仕事するための光熱費は自己負担になりますし、仕事に必要なアイテムを購入しなければならない場合もあるでしょう。おそらく、経費精算だけではカバーしきれない負担もありますので、手当として支給されることが歓迎されるようです。
リモートワーク導入企業が抱える課題
(1)労務リスク
雇用者には適切な労務管理を行い、被雇用者が過重労働や仕事に起因する傷病を起こさないよう、健康管理する義務があります。
オフィスワークでは物理的に出退勤を確認できましたが、リモートワークではそれが難しくなります。そのため、勤怠管理と労務リスクという課題が生まれています。出退勤自体はITで簡単に解決できますが、リモートワークでは業務時間内にどのように働いているかが見えづらくなっています。
そこで本当に働いているのかと疑うこともできますが、実はこれはあまり現実的ではありません。実際にちゃんと働いているどうかは、仕事の成果を確認すればすぐにわかってしまうからです。むしろ心配なのは、会社から見えないところで働きすぎてしまうことです。要領よく仕事を進んだときに少し長めに休憩するより、無理な働き方で労災になるほうが企業へのダメージとして大きくなるのは明白でしょう。
(2)メンタルヘルスケア
リモートワークで、職場や同僚から切り離されたように感じる人がいます。仕事を通して感じていた人とのつながりやコミュニケーションが激減したことで感じる孤独や孤立感、身近に頼れる人がいない重圧などがストレスとなり、メンタルヘルスのリスクとなっています。
社員同士が顔を合わせる機会が減り、メンタルヘルスケアが必要な状態に陥っても周囲が気づきづらくなっていることもリスクの上乗せになっています。
(3)コミュニケーション不足
前述の通り、リモートワークで社員同士が顔を合わせる機会が激減しています。会議や打ち合わせなど、仕事上で必要なコミュニケーションは確保されていても、それ以外の会話はなくなってしまったという職場もあるようです。
(4)帰属意識、人間関係の希薄化
社員同士のコミュニケーション不足が続くと、社内の人間関係が希薄になっていきます。また、コロナ以降の新入社員には出社した経験自体が少ない場合もあり、会社の一員となったという帰属意識がなかなか育まれない傾向があります。
帰属意識を持てない、つまりその会社で働く理由を見つけられないことが、転職する動機につながる場合もあります。転職自体は悪いことではありませんが、在職中に会社について理解を深めることなく、曖昧な動機で転職した結果、転職してから「前の会社の方が良かった」と後悔する若手もいるようです。
(5)生産性の低下
リモートワークによって生産性が低下する可能性を指摘する意見は多々ありますが、リモートワークの環境が整っていないことがもっとも大きな原因と考えられます。
リモートワークで業務を円滑に進めるためには、仕事に使用するデータをデジタルで共有することと、関係者の間で仕事の進捗状況や成果を共有、可視化する必要があります。コロナが発生した頃に、指摘されたように日本のデジタル化は遅れており、急遽、リモートワークに対応したために、過去のデータなどが課全にデジタル化できていないケースも少なくありません。また、リモートワークの仕事の進め方やコミュニケーションに慣れないために、一時的に生産性が低下することも考えられます。
リモートワーク中の福利厚生の課題は「多様化」への対応
在宅のリモートワークは一人一人の環境が異なり、また個人の価値観も多様化しているため、すべての人にあてはまる福利厚生のニーズを見つけるのは不可能と言ってよいでしょう。むしろ、一律で提供する施策ほど不公平感を生みやすく、自分の条件に合わなくて活用できないことに不満を感じるケースもあります。
コロナ以前から、若手を中心に会社行事への参加を避けたがる傾向が強まっていて、飲み会や社員旅行といったイベントは参加率、満足度ともに微妙な状態という会社が多くなっていました。アフターコロナとなってもこの傾向は継続する可能性が高く、多様化への対応が福利厚生の課題と考えられます。
これに対応するために、サブスクやカフェテリアプランなど、個人が利用したいものを選べるタイプのサービスを、福利厚生に活用する企業が増えています。
リモートワーク中の社員に提供したい福利厚生サービス5選
前述の通り、リモートワークによる仕事環境の変化で課題が生まれています。そうした課題に対応するためにリモートワーク中に活用できるサービスを、福利厚生として提供する企業が増えています。ここでは、リモートワークを支援する5種類のサービスとその例を紹介します。
(1)食事、食材などのデリバリーなど
社食に代わる食事補助のサービスとして、リモートワーク中の自宅に配送するサービスが利用企業を伸ばしています。減塩、減量といった健康状態に配慮したメニューも用意されており、生活習慣病への対策としても活用できます
・オフィスおかん仕送り便
https://office.okan.jp/blog/shiokuri_bin/
社食の運営が難しい小規模事業所向けの社食サービスとしてスタートした、置き型社食®︎「オフィスおかん」が、お惣菜をリモートワーク中の従業員の自宅に配送する「オフィスおかん仕送り便」を始めました。法人利用では仕送りプラン・チケットプランを選択でき、月に一度、配送先1件あたり2,980円(企業様負担額)で利用できます。
引用:「オフィスおかん仕送り便」活用事例
企業名:SMN株式会社 様
以前から、社員の健康への懸念があり「オフィスおかん」を利用していただいていました。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、在宅勤務が増える中で、「なんとかして在宅でも従業員の健康サポートを継続したい」という思いと、従業員からの「家に送られてきたら良いのに」という声から「オフィスおかん仕送り便」を導入し、併用されることとなりました。
その結果、「手軽でとても美味しく、ランチを簡単に済ませることができる。家族にも大変好評だった」「栄養バランスの良い食事を短時間で利用できるので、家事の負担がとても下がる」といった好反応をもらいました。
また、社内で行われたアンケート結果によると、利用満足度は「オフィスおかん」が82%、「オフィスおかん仕送り便」が88%と、どちらも高く多くの従業員様に愛用されているようです。
(2)リモートワーク家具の提供
一般家庭のデスクや椅子、照明は長時間のパソコン作業に向かないため、腰痛や眼精疲労の原因となりやすいと言われています。作業効率や生産性の低下だけでなく、腰痛などの労災リスクにもつながります。しかし、仕事のために自宅の家具を買い替えるのは大きな負担になります。
こうしたニーズに応えられるサービスとして注目されているのが、家具・家電のサブスクリプションです。必要なタイミング・期間で必要な家具や家電をレンタルできるので、先行きが不透明なリモートワークにも対応しやすく、出費を抑えて対応することできます。
・CLAS
https://clas.style/campaign/2003_telework.html
家具、インテリア、家電のサブスクリプションサービスのCLASが、従業員のCLAS利用料金の一部を企業が負担できる、テレワーク導入サポート福利厚生サービスを提供しています。対象企業の従業員のメールアドレスを管理し、従業員がCLASサイトから対象のメールアドレスで登録・商品を注文すると、自動的に福利厚生サービスが適応されます。負担割合は、企業側の任意で決められます。
(3)訪問保育、シッター派遣
ある職場では、オンライン会議中の子供やペットの乱入はスルーするという暗黙の了解があるそうです。最初はアクシデントを楽しんでいたそうですが、たびたび脱線すると進行に支障をきたすため、スルーすることになったそうです。
実際、自宅で子供をみながら仕事をするのは非常に大変なことです。女性に負担がかかってしまうことが多く、ストレスの原因にもなっているようです。そうした状況を解決するため、自宅に保育士やベビーシッターを派遣するサービスの利用が増えているそうです。
・キッズライン
https://kidsline.me/contents/corporation_inquiry
地域、資格、プロフィール、過去のレビューなどから、サポーターを選んで予約するマッチングサービスです。社員が利用したポイント分を法人に請求する福利厚生プランや内閣府ベビーシッター割引券を導入(2021年11月19日までのアカウント登録者に限る)でき、法人利用もしやすくなっています。法人利用の場合は、事前審査が必要です。
<導入企業>
Yahoo! JAPAN、freee、弁護士ドットコム、ADWAS
(4)オンラインレッスン
コロナ感染防止対策のため、さまざまなレッスンがオンラインで提供されるようになりました。コロナ以前からオンラインレッスンの定番だった英会話を始めとする語学、ヨガやエクササイズ、ダンスなどのフィットネス系、料理教室や生け花、歴史や文学、資格取得などの講座もオンラインで受講できます。
レッスンの形態も講師と受講者のマンツーマンのほか、クラス単位のレッスンがあり、レッスン内容だけでなく、参加することで人とのコミュニケーションを楽しんでいる人もいます。
こうしたオンラインレッスンを活用して、趣味や資格取得のサークルや勉強会を設けることで、社員間のコミュニケーション活性化や人間関係の構築にもつなげられます。会社行事には消極的な人でも共通の趣味や興味があれば参加しやすいでしょう。
・オンラインウェルネスBRST
https://brst.work/price/
従業員一人一人の積極的かつボトムアップなウェルビーイング思考の支援をめざしたオンラインウェルネス。仕事の合間のリフレッシュから毎日の運動習慣をライブセッション、トレーニング動画などでサポートします。法人プランでは、従業員はライブセッション、トレーニング動画を回数無制限で利用でき、コミュニケーションツールを利用したウェルネスサポートを受けられます。また、オリジナル企画のワークショップセッション(月1回、30分)の開催、健康経営アドバイザーによる1on1ミーティングや利用状況などをまとめたBRSTレポートなど、従業員の健康管理へのサポートも充実しています。
(5)オンラインカウンセリング
オンラインレッスン同様、オンラインカウンセリングのサービスはありましたが、コロナ禍の影響で孤立感やストレスを抱える人、自分の課題や悩みを相談したい人は増えています。
カウンセリングでイメージされるのは心理カウンセリングですが、将来の仕事や資格取得などについての助言を受けるキャリアカウンセリング、保健師、栄養士などによる健康に関する指導もカウンセリングに含まれます。
・cotree
https://corp.cotree.jp/
220名以上のカウンセラーが登録するカウンセリングプラットフォーム。24時間対応。登録カウンセラーとの半数以上は臨床心理士、公認心理師などの有資格者です。利用料金を法人が負担できる法人・団体向けプランもあります。
福利厚生はブランディングと人材確保への投資!
福利厚生は社員に働きやすさ、居心地の良さを提供する施策であり、人材確保のための重要な戦略のひとつです。業績に直結するものではありませんが、企業イメージの向上やブランディングにもつながる戦略的な投資と言ってよいでしょう。
リモートワークの普及と価値観の多様化により福利厚生にも選択肢の充実が求められ、オンラインを活用したサービスを活用する企業が増えています。その一つであるオンラインウェルネスは、健康維持とメンタルヘルスケアの両方の効果を期待できます。
運動習慣によって傷病などの労務リスクを軽減すると同時に、一緒にレッスンを受けることで社員間のコミュニケーション活性化にもつながります。オンラインウェルネスを活用した社内イベントなど、オリジナル企画の福利厚生を立ち上げることもできるでしょう。